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「俺の平穏返せ――――――っ!!!!」






がしゃ―――――――――ん!!!



「それってここで俺に向かって言うセリフっ!?むしろもっと別に原因に向かって言おうよっ!!!」

突然に舞い降りた、衛宮邸を親の敵のように殲滅する光の御子、アイルランドの大英雄クー・フーリン。
その彼が世知辛いセリフと共に投げ出すのは必殺の魔槍、ゲイ・ボルク。
今の攻撃で衛宮邸に500ポイントのダメージ。
自力での回復は見込めないものとしてこちらは防衛に徹するしかない。
器用に人間は避けて建物だけに攻撃を向けるその手腕は感嘆に値するが、屋敷を壊していると言うただ一点において、ランサーの持ち点をマイナスにしてしまいたい。
持ち点なくなったら退場なんだぞ!!
よく分からない罵倒にただひたすらにこの不条理な破壊活動が終了することを祈る。
ただその間も、どか――んばき――んぐしゃ――等の破裂音は止まない。
あ、浴槽がふっ飛んでらーと認識したところで慌ててロー・アイアスを投影する。

この際出来には目を瞑る!!どうか!!この屋敷を守ってくれ7枚の花弁よ!!

「待て待て一時の衝動で破壊活動に勤しむなむしろこれ以上家壊さないでくださいお願いします」

離れはセイバーにエクスカリバーで破壊され、玄関から居間にかけては現在進行形でランサーの呪いの槍で微塵にされる始末。

「えぇとこれってなんかの罰ゲーム?皆実は衛宮邸に恨みでもあるのっ?」

でなければこんなに破壊の限りは尽くせまい。

「ええいっ情けなんかかけてやらねぇ殿中でござる――――――っ!!」

突き出した掌をくるりと回し、真紅の呪槍は綺麗な弧を描く。
返した手で飛び散った破片を綺麗に凪ぐ様はソレはソレは絵になるのだが、如何せん口から飛び出すセリフがおかしい。
多々ある中でも断突に突っ込みたい部分に、遠坂は呆れたように呟いた。

「ランサーの狂乱っぷりも気になるけど、その前にあのセリフにこそ突っ込みを入れるべきよね」

「ランサーさん、忠臣蔵がお好きなんでしょうか」

「あれは主を思う忠義に尽くした臣下の、素晴らしいお話です」

「…セイバー、貴女みたことあるの?」

「以前お昼の再放送で見ました。非常に感動しました」

うっとりと、胸の前で手を組み綺麗に微笑するセイバー。
サーヴァントが再放送って。
世知辛いよ。

嗚呼、もしじいさんがこの惨状を見たらどんなに悲しむか…。

…案外嬉々として自分も混ざりそうで怖いな。

うっかり想像した案外笑えない想像に、慌てて目の前の惨状に意識を戻す。
現実逃避したところでこの悲劇からは逃れられないんだ。
真っ青な髪を振り乱し、今だ怒りに燃えるランサーに、どうしたもんかと思案する。
これ以上家を壊されたら今後に差し支える。
いや直すけどさ。
理由もなくこんな理不尽な暴挙に出るような奴ではないので、一体何が原因なのだろうかと考える。
昨日昼食をご馳走したばかりで、さし当たって該当するようなものが思いつかない。
てゆーかそもそもそんなに接点ないし。
釣り?釣りなのか?
だったら奴当たりは某赤いフィッシュ野郎に直にして頂きたい。
断固としてランサーズヘブンの闖入者の存在を否定しながら、 もしかしておかずの中で嫌いなものでもあったのかなぁと思ったところで、後頭部に鈍い衝撃が走った。
それはランサーも同様だったらしく、頭を押さえて仲良く地面とお友達になる。

「アンタ達いい加減にしなさいよ。こんなんじゃ話が一向に進まないじゃない」

腕を組み、颯爽と立つ姿は威厳に満ち溢れているが、その指先からは魔術で編みこんだ攻撃の余波が乗っていてうっすらと白い煙を上げている。
いきなり無防備な人間と英霊にガンドを打ち込むのはどうなんですか遠坂さん。

「…嬢ちゃん、相変わらず良い腕してやがる。英霊に防御もさせずにガンドを打ち込める奴なんて、人間じゃあ中々いないぜ」

よっぽど痛かったのだろうか。ランサーの赤い目には涙まで浮いている。

「ありがと。最速のサーヴァントにそんな風に褒められるのは気分がいいわ」

遠坂は皮肉気に吊りあがったランサーの笑みをあっさりと無視すると、にこりと優雅に微笑した。



いや褒めてねーし。



そんなランサーのぼやきが聞こえる。

遠坂に宥められ(穏やかな方法では決してなかったが)ようやく気が済んだのか、ランサーは赤い魔槍を掌から消すと諦めたように瞼を下ろした。
突然に止んだ膨大な魔力の渦が、気流に乗って上空で霧散する。
竜巻のような魔力を引き起こしていた本人が大人しくなったので、周りを取り囲んでいた粉塵も次第に落ち着きを取り戻し始める。

そうすると当然視界も良好になるわけで。

「…ん?」

「あら?」

「…あ」

「――っ!!?」

良好になると当然ランサーの姿もはっきりと確認できるわけで。
むしろ陽光に照らされた蒼い頭髪が、光をはじいて照りかえる様が純粋に綺麗でうっかり逃避したくなる。
でもやっぱり目に入るものはどうしても無視できないし見なかったことには出来ないのだ。





たとえランサーの頭に獣の耳らしきものが見えたとしても、だ…。






嗚呼ランサー。
お前が何にそんなに憤慨していたのかよっっく分かったよ。


分かりたくなかったけど…。













ようやく獣耳らしい展開?
でもうっかりバイオレンス風味破壊活動中。
亀の歩みと言うか脱線しまくりというか無駄話多い?
いーよいーよどうせイロモノサイトだし、これを看板小説ってことで怠惰に連載していけばいいよ。嘘ですごめんなさいごめんなさい。















 

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