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とりあえず応急処置的に居間を投影し、ついでにランサーの再生のルーンで大まかに玄関を立て直す。
時間が巻き戻るみたいに家が再生していく様に、事が終わったらコイツに全部やらせようと算段する。
もちろんセイバーにも手伝わせて。
贔屓は良くないよな、うん。
たとえやった端から破壊されてくと分かっていても。



舞った塵や木屑を処理し、粗方片付けてさてと着席した座卓の前で、ランサーは不機嫌そうに切り出した。



「…不可解なことが自分に起こったら、まずここに足運ぶだろ普通」

至極当然の当然のようにそう切り出されて、思わず突っ込む。

「え、ちょっと待ってランサーさんここそんな扱いなの?」

他の面子はともかく、そーゆー不名誉なカテゴリに俺を放り込まないで欲しい。
摩訶不思議を運んでくるのはあくまで赤いのやその他大勢であって、俺は最終的に巻き込まれるだけなんだし。

「だってここの家主は坊主だろ?」

「家主ってそんな不祥事まで面倒みなきゃいけない存在だっけ?」

「店子の不始末は家主である士郎が責任持つのは当たり前でしょ?」

さもありなんといった表情で、ランサーと遠坂はお互い納得したように頷いた。
ちなみに桜は複雑そうな顔で卓にお茶と茶菓子を並べ、セイバーはそもそもその意味を理解していないのか獣耳をぴこぴこと揺らし茶菓子に釘付けになっている。
家主っていうか、ここ別に人に貸し出してる訳じゃなくて、皆が勝手に部屋借りて住んでるだけなんですけど…。
俺の叫び無視ですか?
いや知ってましたけど。
なんで家主なのにここの勢力の最下層に位置してるんだろう、俺。
ピラミッドの底辺の座をアーチャーと日々競っている俺としては、このような扱いは我慢ならん。
…言った所でどうせ無駄なんだろうけど。
ちょっと遠くに逝きそうになった意識を無理やり引き戻すと、ランサーはちゃっかり出された玉露を美味そうに啜っていた。
同じように染まった蒼色の耳がふさりと揺れる。


しぱたしぱた  ふさふさ


滑らかな毛並みの耳としっぽが、ぴこぴこと同じように揺れているセイバーの耳と同調する。

獣が2匹になったなぁ。
しみじみと、改めて意識してみる。
なんていうか、こう、シュールな絵面だよね。

「桜、こーゆーのには出涸らしとかでいいから。玉露なんて勿体ないから」

「…いきなり言うじゃねーか坊主。売られた喧嘩は喜んで買うぜ、俺」

蒼い獣耳のせいで、余計獣くさくなった真紅の目に、物騒な光が灯る。

「だって別にランサー客じゃないし。持て成す理由はない」

「客じゃなくて被害者だっつーのっ!!!!」

この己の姿をとくと眼に焼き付けよと言わんばかりに立ち上がり威圧してくる。
また魔槍を取り出すくらいの勢いだったので、ひとまずブレイクブレイク。

「えぇとランサーさん。アンタがその姿にこの上もない憤りを感じているのはよぉぉぉぉぉぉっく分かった」

そりゃ人んち半壊に追い込むほどだもんな。

「朝起きていきなりこんな姿になってりゃ、そりゃちょっと破壊活動に走りたくなるだろ、普通」

お前”ちょっと”って言う言葉の定義、今すぐ辞書引いて調べてみろ

「そこの騎士王だってそうだろ?」

ぴくぴくとランサーの耳が苛立ったように動く。
当のセイバーはお茶請けで気が紛れたのか、こくこくと幸せそうに最中を頬張っている。

「いやうんまぁセイバーも耳生えてるって気付いてからは凄かったけど、持続性はそんなになかったかな。割とあっさり落ち着いた」

「器が大きいんだか鈍感なんだか大らかなのかわかんねーな…」

はぐはぐと我関せずと7個目の最中に手を伸ばすセイバーに、イラっとランサーの片眉が吊り上った。

「こ・の・く・い・し・ん・ぼ・う・万・歳・騎・士・王がっ!!!!」

「やんっ!!」

ぐいぐいとセイバーに生えた丸い耳をランサーが容赦なく引っ張りあげる。

「この非常事態ちっとは理解しやがれ腹ペコ大王がっ!!お前絶対この屋敷に毒されてるぞここにいるから色々巻き込まれるんだっていい加減気付け!!」

「失礼ね。まるで諸悪の根源がここにいるみたいな言い方じゃない」

「ランサーさんは結局教会にいてもどこにいても、悲劇の結果はあまり変わらないと思いますが…」

遠坂と桜は結構酷いことを言ってると思うが、まぁ概ね俺もランサーの意見に同意できると思う。

諸悪の根源が何言ってんだ遠坂!!

「痛い痛いランサーそんなに強くしたら壊れます、あっあっ千切れるっ、……って痛いって言ってるでしょう!!!」

がす

どうやら敏感らしい獣耳をぐいぐいと引っ張られたのが気に入らなかったのか、 セイバーの膝蹴りがランサーの鳩尾にクリーンヒット。
悶絶するランサーを軽やかに蹴り倒すと、セイバーは涙目になりながら肩を震わせた。

「先程から黙って聞いていれば好き放題、何を言っているんですか!!シロウに罪はないしこの屋敷にも罪などあるわけがない!!」

びしぃっと指を突きつけてセイバーは思わず平伏したくなるような声音で声高に言い放った。

セイバー、最中12個も完食しながら人の話聞いてたんだ!!

「そもそもランサー、貴方は如何なる理由があってこの異常をシロウのせいになどするのですか!!」

「…っ、別に、坊主本人に、原因があるとは言ってねーけどな」

げほげほとよっぽど膝蹴りが綺麗に極まったのか、ランサーが腹を押さえて呻く。

「それに、坊主っつーか家っつーかむしろ住人の方に咎はあると言うか…」



「何よ」



意図した訳では決して、決して決してないが、全員揃って遠坂を見る。

「何か、問題でも?」

ふわりと、それは優しげに微笑された遠坂に、今この場で反論できる強者がいただろうか、いやいない。

「そもそもなぁ」

蒼い耳をぱたりと寝かせて、ランサーが首を擦りながら仕方なさそうに呟く。

「同じことしか繰り返してねぇ俺の日常のイレギュラーっつったら、たまたま昼飯喰いに来たここしか思い当たらねーんだよ…」

ぽつりと零された言葉に奇妙な違和感を覚えながら、はてと首を傾げる。

「俺の非日常でも最たるイレギュラーは、ここしかねぇって言ってんの」


現に、ここで時間を共有したサーヴァント二人には、異常が現れただろう?と。

小さな子供に問いかけるように、覚えの悪い生徒に諭すように。

「昨日の、この屋敷で起こった『何か』が、この異常の原因だと思うぜ」

ランサーは大仰に腕を広げた。





ぞくりと


獣線の濃く浮き出るランサーの真っ赤な瞳が、警鐘を鳴らし始める俺の悪寒を冗長させる。






キノウ     ココデ    ナニガアッタ?
















最後が唐突にシリアス風味で終わりましたが、次回急展開!!
人間頑張ればここからシリアスに落とせるんだ!!の、巻き。


嘘です。


遺伝子レベルで笑いを求める私の体質は業が深いので(業かよ)今更シリアスにしようなんて1ミクロンたりとも考えてません。

ここにきて不幸な人種が増えました。
おめでとう士郎不幸仲間が増えたよ!!
これでもう寂しくなんかないから!!
















 

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